2017年7月
アメリカ買い付け紀行『霧の向こうの買い付けの町』
日が前後しますが、
買い付け二日目、サンディエゴへ。
LAを出るときには晴れていたのに、
オレンジカウンティを過ぎ、
海兵隊基地に差し掛かったあたりから思いがけず霧。
しばらく続きましたが、
濃霧にならなくて助かりました。
(これくらいの時期は、朝、わりと霧が出ます。
もうずいぶん前ですが、ホテルの部屋のドアを開けて外に出ると(外廊下のホテルでした)、
分厚い雲のなかにいるほどの霧だったことが。
視界は本当にゼロで、あまりの状況にしばらく意味が分からなかったくらい(笑)
車はおろかロビーにも行けず、部屋に戻ることしか出来ませんでした。
30、40分くらい待機したんだったかな。
あんなのはあれ一回きりだなあ。というか、あんな霧あるんですね。
町のみんなはどうしてたんだろう?!)
サンディエゴとひとくちに言っても、東京都の5倍ほどの広さがあります。
目的地は快晴。
平屋のコテージからサーフボードを抱えたトランクス姿のサーファーが出てきて、
歩きながら海へと向かう。
ビーチがある場所ではそういったのが日常的光景のサンディエゴですが、
古い家が多く、東海岸で暮らす人びとの別荘もあったりすることから、
良いアンティークの出物が多い。
手荷物で持ち帰ってきて、アップ後にさっそくご注文もいただきましたこのレディランプも
ここサンディエゴで。
これを買い付けたのは、
総勢10人近いバイヤーが日々ハウスセールなどをまわって
アンティークやビンテージを集めてくるディーラー。
とても温かい人柄のオーナー夫妻。
「そういえば、レイチェル・アシュウェルが日本にふたつ店を出したのね!
Kioの店には近いの?」
えっ、急に近いっかって訊かれると。。。
ひとつは車で1時間半くらいと言うと、
「わあ、近くじゃないの!」と。
たしかにアメリカの感覚だと、すごい近いってことになるんでしょうね。。。
「パリのホテルから出てきたものなのよ」
1930年代のキャビネットをディスカウントまでしてすすめてくれました。
正面の扉が取れていますが、オープン式として使ってもいいなと思った。
(じっさいこの状態でホテルで使われていたのだそう)
ただ、脚が半分ごっそりと欠けていて、
これはさすがに・・・。
最高に素敵なのに、ああ残念!
アップマーケットのアンティークのペイント家具。
今回は縁が無かったけど、
こうやって画像を振り返ると、これから挑戦していきたくなる。
彼らだったらまたいいのを仕入れてきてくれるような気がするから
今後に期待!
こちらはロンドンの近衛兵を描いた19世紀のポスター。
値段がまったく合わないので買えませんが、
出会えただけで嬉しくなる。
ところで、ランプ以外にも色々と買い付けしています(笑)
家具が中心ですが、変わったところではこんなベッドのヘッドボードも。
(ちなみに今回はディーラーがこちら一軒のみの登場ですが、
帰り道のオレンジカウンティも含め、
この日は8軒のディーラーをまわりました)
「Kioはいつ来たの?」と訊くので、昨日(6日)だと答えると
「あとちょっと早ければ、『4th of July』でとっても賑やかだったのに」と。
そう、7月4日はアメリカの独立記念日。
「ビーチでは花火がいっぱいあがってね。
セレブレーションよ」
いつも通りで見かける寡黙そうなサーファーたちが
夜のビーチで大はしゃぎしている様子が浮かびました。
サンディエゴ。
スローな空気と、クラッシーな雰囲気がとけ合う町。
ここがとても好きだと言うと、
「KioもいつもLAばかりじゃなくて、サンディエゴにも泊まってみたら。
朝が素敵なのよ」と、オーナー。
うん、そうだ、
次回はほんとにそうしよう!
空港から真っすぐ向かって、
二日目まで滞在するのがいいかもしれない。
願わくば道中は霧になりませんように。。
アメリカ買い付け紀行『オイルラッシュに沸いた町で』
日曜日。
普通ならフリーマーケットへ行くところなのですが、
なぜか金曜日くらいから「ある町」へ行かなければならない気持ちが湧いてくるわ消えないわで(笑)
そんなときにはそれに従ってみようということで、
LAから二時間弱の内陸の町へ出かけました。
延々と続く山道の途中、こんな遊園地が見えます。
山道が終わると、今度は果てしないと思えるくらいに続く農場の中を走ります。
ようやく町が現れ、ダウンタウンに向かうと、
そこはかつてオイルラッシュに沸いた面影の残る町並み。
今はあまり産業の賑わいは感じられず、
そんななか軒を連ねるアンティークモールが目を引きます。
ヒストリックな建物を今ではディーラーたちがモールに改装して商売をおこなっている、
現在この町は、そんなアンティークロウでもあるのです。
↑ウールワースの店舗跡も、アンティークモールとして使われています。
看板はそのままに。
ひと頃よく来ていたものですが、何年ぶりかよく思い出せない。
とにかく久しぶりです。
ディーラーは10数軒。
ぜんぶを回る作戦です。
こんなハリウッドリージェンシーのベンチとか、
ユニークなモノが見つかるのですが、小物が中心。
ローズボウルのフリーマーケットをやめて来たからには
ここはどうしても手ごたえを感じるような成果を出したい。
半分くらいのディーラーを回って
もう15時になろうとしていたでしょうか、
大きなキャビネットが一台見つかったものの、
車の荷台はいまださっきのベンチがゆっくりと鎮座している状態。
どうして「ここ」だったんだろう。
自分の意識下からの声に疑いしかなくなった頃、
最後から二番目に訪れたディーラーがヒットでした。
フレンチテイストのものが充実していて、
大小何台かの家具を買い付けることが出来ました。
「お客さまと早く分かち合いたい・・・」
そうだ、この気持ち、この感触だ!
やっとこの日を立て直すことが出来ました。
ここのモール、地下に映画館のセットが作ってあります。
モノクロ映画のセリフや音楽が響く地下の古着ブース、
この階には私ひとりしかいないこともあって、
すごくシュールでした。
ときどき夢で見るような光景です。
ここも地下ですが、こんな空間も好き。
街なかで今でもやっていたら、こういった内装を求めてただろうなあ。
・・・というか、名古屋時代の店に似ている(笑)
余談を挟みましたが、
そして、もうすぐ閉店だけどまだ間に合うから見ていこうと、
そう思って入った最後のモールが極めつけだったのです。
うそ、うそ、うそ、うそ・・・・・!!!
こんな素敵なソファ、
すごい・・・。
しかも二台あるなんて・・・!!
それなりの値段でしたが、でもどうしても欲しいと思いました。
それで、モールのマダムにお願いして、ブースオーナーに値段交渉をして貰うことに。
小幅なのでなんとか通るかな・・・・・。
「She said YES!」
祈る私に向かって、マダムが親指を立てながらそう言いました。
ありがとう!ありがとう!
ほんとに今日に、ありがとう。
この子たちが呼んでくれたのかな。
さて、積み込み。
今となっては満杯近いバンの荷台(笑)
モールのマダムの旦那さん、
しまいがけにディスプレイ替えに来ていた、とあるブースのオーナー夫婦も手伝ってくれて、
いちぶ積み替えをして、なんとかソファ二台もうまく載せることが出来ました。
この日も40度近くありました。
終日ひと影まばらな町をあとに。
しかし振り返ると、モールを回る順番が完全に逆だったんですね。。。
ソファの積み込みを応援してくれた夫婦の車に追いつきました。
こちらに気づいていたみたいで、
交差点での別れ際、窓から大きく手を振りながら去って行きました。
帰路ロサンゼルスへ。
遊園地のあたりで少し混雑。
スピード、ファンタジー、電飾、音楽、色彩、
そしてどこかシュールな雰囲気、
遊園地には自分の好きなものがぜんぶある。
子供の頃から好きで、それはそうだとしても、
この歳になった今でも大好きな自分がおかしくなる。
いや、ほんとに好きで、住めるものなら住みたいくらいなのです(笑)
アンティークが好きな気持ちともだぶんどこかでリンクするんだろうな。
バックミラーに映るソファの、何とも言えない色や雰囲気に魅せられながら
そんなことを考えたりしていました。
アメリカ買い付け紀行『いちばん暑かった日』
7月6日から14日までアメリカ買い付けでした。
アメリカ西部、熱波だと聞いておりましたが
南カリフォルニアも暑かったです。。
土曜日、とくに暑いと言われる内陸の町へ。
住民は日中の外出はままならないのか
ひとつめの目的地に着くと、町はゴーストタウンと化していました。
オールドタウンに古くて瀟洒なリゾートホテルがあり
そこだけが唯一、観光で来た車の出入りで混雑をしていて、
町とホテルのそのコントラストが、なんだか白昼夢のようで異質でした。
こんなのを皮切りに、
この日はバンの荷台にいっぱい、たくさんの品物を集めることが出来ました。
ここは「マダムたちのフリーマーケット」で知り合ったディーラーがオープさせたショップ兼ウエアハウス。
いつもなら賑わっているはずの店内も、人影なし。
「あなた、さいきんフリーマーケットで見ないじゃない」
カウンターに座り、バケツくらい大きな紙コップに刺さったストローで中のドリンクを飲み続けていたマダムが
私に気づいてそう言いました。
いちど行きそびれたら、それ以来タイミングが合わなくなってしまった・・と答えると、
「じゃあ、この次ね」と。
しばしば慣習で発せられる「NEXT TIME」 のことば。
いつも嬉しい気持ちにさせてくれる。
「暑いわね・・・」と、今度はエアコンのきいた店内に扇風機まで回し始めるマダム。
私が来る少し前まで倉庫で作業していたから、暑くてたまらないのだそう。
大きなテーブルも買うことに。
バンへの積み込みを手伝って貰うのが悪い気がした。。
ラスティックな鏡や、ガーデンの雰囲気を取り込んだ、素敵な店内。
場所は変わって、ここは大型アンティークモール。
とあるブースにあった、全長2mは超えていたであろうランプ。
さすがに大き過ぎて見送りましたが、
こんなのに出会えるのが楽しい。
このモールでは素敵な椅子を筆頭に、
雑貨をたくさん集めることが出来ました。
ディスプレイ用にですが、
さいきん昔のカードが売られていると、
その中から気に入りのを何枚かピックアップするのがささやかな楽しみ。
新品のカードもよく混じっています。
画像だと分かりづらいですが、上が新品で、
下がアンティーク(この子はいまKioにいます)。
この界隈を6軒こなして、
20分離れた町へ移動。
途中、給油に寄り、ついでに水のボトルを買うことも忘れずに。
いちばん最後に訪れたアンティークモール。
曇っているわけではないのです。暑さで空が妙な気配。
ここもいつもと違って、駐車場はガラガラ。
バンはもう満杯近く。
もし出物が多かったら、後日取りに来るのは時間的に難しいから、
積み替えないといけなくて、
それはいちばん考えたくないことでしたが、
それでもいったんモールの中に入ると、何か出てきて欲しいと思う気持ちだけになる。
天の助けだったのか、、
けっきょくサイドチェアが一台見つかるだけにとどまりました。。
三日目。
もっとも暑かった日の買い付けが終わりました。
いい出物がたくさんあり、
次の日への気持ちを膨らませながら眠りについた日でもありました。
ちなみに翌日も同じように暑くて、
ローズボウルのフリマを直前で辞めにして、
別な内陸の町へ行ったのですが、
ここでの出来事はまた後日綴りたいと思います。
それでは今日はこの辺で!
買い付け前日の日記
明日から買い付けです。
初回の買い付けも7月でした。
初回は記憶のなかでとくべつな色合いがあり、
あったことをけっこうよく覚えています。
同じ月だからか、
ここ数日、さいしょの買い付けのことを色々と思い出していました。
現地の日本人アテンダント・Kさんに
三回目の買い付けまで何度かアテンドして貰ったことがあるのですが、
初回、ある田舎町のアンティークモールで
水牛の角を組み合わせて作った椅子を見つけたときのこと。
「これ、ミュージアムコレクション級なんですよ!」と大興奮する私に
「え?!1000ドルって書いてあるけど、まさか買う気じゃ・・」と、
値段にも、そしてモノにも面食らうKさん。
↑こんな椅子でした。
「ずっと欲しいと思ってた椅子なんです。
ひょっとして買い付けで見れたりして・・って思ってたんですけど、
まさかほんとにあるなんて・・・・・!
リストにも一応書いてあったんですよ、
ほんとにあるなんてどうしよう・・・!!」
「どうするの?ほんとに買うの?1000ドルだよ」
「たぶん買えないけど・・・。ちょっと考えていいですか」
「それにこれ、何で出来てるの?骨??」」
骨ってどうなのよ・・・とか言いながら携帯を取り出して
電話をかけ始めるKさん。
「もしもし。なんか岡田さんがさあ、すごいの買おうとしてるんだよ」
相手は運送会社さん(日系なので日本語です)でした。
輸入可能かどうか訊いてくれたのです。
「ダメだって。ワシントン条約があるから。
輸入してもいい種類なのかもしれないけど、それでも証明書が必要になってくるって」
それで椅子は諦めたのですが、
木のコブで作った変わったテーブルランプを買ったり、
メキシコ国境間際にあるメキシカン雑貨の店まで出向いて
とても古くてカラフルな民芸品をいくつか仕入れたり、
シノワズリーのつい立てを求めたり・・・・・、
ずい分と冒険もしながら買い付けをしたものでした。
オープン前で、
まだひとりもお客さんのいないときの買い付け。
自由な感覚も冒険心も忘れてしまっているわけではないけれど、
いまいちど初心に帰って・・・・、
買い付けにのぞんできたいと思います。
どんなモノが見つかるだろう!
ぜんぶがお客さまにもときめいて貰えるようなモノにしたいです!
それでは、行ってきます!