2019年10月
「アメリカ買い付け紀行」と「お知らせ」
まずはお知らせから。
今回のコンテナ、
本日無事に通関許可が下りまして、
あさって23日水曜の荷受けとなりました。
つきましては、
いつものようにしばらく準備でお休みをいただきまして、
お披露目は、29日火曜からとなります。
当初は今週末に間に合わせる予定だったのですが、
台風の影響で遅れが出てしまいました。
店頭やメールなどでお伝えさせていただいた皆さま、
こんなことで遅れてしまいますこと
お詫び申し上げます・・・
さて、今日も買い付けの断片を・・
ときどきこの買い付け紀行に登場する
いつも喜びをしかめっ面で表現する(笑)ディーラーのマダムから
エドワーディアンのビューローキャビネットを買い付けました。
買い付けるにあたって
まず価格面でのハードルがありました。
しかしこれは、マダムがビューローのオーナーに電話で掛け合ってくれたお陰で
(このビューローはマダムが委託販売をしている品でした)、
何とか日本で販売出来る金額になりました。
(マダムは受話器を片手に、しかめっ面で親指を立てて、
こちらに交渉成立のサインを送ってくれました)
次に状態。
キャビネットの中は布張りになっていて、
かなり傷んでいました。
何しろ19世紀の布です。
けれどこれに関しては
「自分だったらこのまま使いたいな」と思えるような
そんな風合いでしたし、
それに張り替えが出来るので、
お客さまにまずこのままの状態でお見せして、
張り替えご希望ならそれに応じればいいので、
とくに問題はないと思いました。
いちばん気になったのが(細かく言えば色々ありましたが)、
サイドパネルの裾に入ったクラックでした。
正直、無かったらどんなに良かっただろうと思いました。
でも、“この一台”なのです。
たとえば18世紀の宮廷家具ほどには希少&貴重品ということではありません。
自宅で使っているひともいるでしょう。
けどそれでも、ミュージアムやアンティークの本で見る機会のほうが多い一台です。
それがいま目の前に、手の届くところにある。
いや、というよりも何よりも・・・・、
ただただ、この家具は何て可愛らしいんだろう、素敵なんだろうと、
だから欲しいと思った。
「これがKioをまた変えてくれるような気がする」
もちろん、ただKioかわいさのことだけではありません(笑)
これが入って、Kioが面白くなることで、
最終お客さまに喜んでいただける。
新しい試みをするときにはいつも頭に浮かぶことを
この時も強く思いました。
決断に長くかかりましたが、
そばで見守ってくれていたマダムに買う旨を伝える瞬間の嬉しかったこと。
そしておそらく私と同じように嬉しかったはずのマダム。
「Yeah Yeah!!」と言ってくれましたが、
その表情はやはりしかめっ面だったのでした。。。
↑マダムのウエアハウスの一角
ビューローも他の子たちも、
明日、無事に届きますように!
アメリカ買い付け紀行『お宝ハンターとの出会い』
内陸の町から帰った翌日は、
LAから一時間ほどの町へ。
「マダムたちのフリーマーケット」で知り合ったディーラーたちのウエアハウスが集う界隈もあり、
彼女らお得意のフレンチでシャビーな品揃えにもですが、
夢やパワーがいっぱいのマダムたちに会えるのが嬉しくて、
このところの買い付けではいちばん楽しみにしている町。
「買い付け前日の日記」で、
テキサスにサルベージに行ったマダムがいると書きましたが、
彼女がいるのもここ。
正確には、あるアンティークモールに間借りをしています。
まずそのモールへ向かいました。
今回はここでの出来事に焦点をあてたダイアリーです。
しかし彼女のブース、
確かにインスタグラムに投稿されていたテキサスでの戦利品があるにはあるのですが、
申し訳程度というか、
これはブースの内装なのよ・・と言わんばかりの量なのです。
彼女もいませんし、
モールのオーナーもこの日はお休みを取っていて、
事情の分かるひとはいませんでした。
おかしいなあ・・・・・
期待が大きかっただけに気持ちがしぼみましたが、
それでもモールには素敵なアンティークやビンテージが沢山で、
いつも通りの感じで、良い買い付けが出来ました。
↑集まったモノのいちぶ
買い付けアイテムたちをモールのみんなと一緒に積み込み始めたところに
ピックアップトラックに乗って二人組の男性がやって来て、
こちらに気づくと、「任せて」と言って私たちに代わり(何しろ女性ばかりだったので。。)
手慣れた様子で残りの品々の積み込みをやってくれました。
そして積み込みが終わると
トラックの荷台から古びた板片を二枚を持ってきて、
「こんなのもし好きだったら、あげるよ」と言うのです。
100年はとうに経っているかと思われる、古い古い板。
風や雨ざらしにもなったようで、灰色に変色をしていて、年輪がすっかり浮かび上がっています。
好きじゃないひとにとってはたぶんただの廃品にしか見えない板・・・、
でも私にとっては宝物です。
嬉しくいただきました。
でもこのひと達、ここでは会ったことないけど、誰なんだろう?
今度新しくブースを出すディーラーなのかな?
そう思っていると、
「テキサスの古い納屋を解体した時に出てきた壁の板のほんの一部なんだ。
これと同じのがあと2000枚、倉庫にあるんだよ」と。
2000枚にも驚きましたが、
あれ?、テキサス??、と・・・・・。
そして次に、
「こんなのもサルベージして来たよ」と言って、
スマートフォンの画像を見せてくれたのですが、
その画像に写っているモノ達、どれも見覚えのあるモノばかり・・・・
「もしかして、Mの・・・・」
そう、彼らはテキサスに行ったマダムMの旦那さんとその相棒だったのです。
どうやら戦利品のほとんどは倉庫に置いてあるのだそうで、
(モールにはいちぶだけ展示して、月末に倉庫で販売会をするのだと言っていました)、
「いつでも倉庫に見に来てくれていいよ」との嬉しい申し出。
倉庫は農場の納屋を再生したもので、
広い敷地には昔のガスポンプがずらりと並んだ様子が画像に写っていました。
マダムMがここまでの規模でやっているとは想像もしていなくて
(インスタにも倉庫の写真はなかったので)、
思わぬ展開に飛び上がったのですが、
彼らの倉庫はこの町からけっこう離れており、
そこまで行って買い付けをするには、あらためて出直す必要がありました。
以前のダイアリーで、
「廃墟お宝ハンター」のジェイ(アメリカのテレビ番組)のことを書いたことがありました。
Mと旦那さんとその相棒は、まるでジェイのチームそのものでした。
サルベージのお話ももっといっぱい聞いてみたかったし、
それらが今眠る古い納屋がどんなだか見てみたい気持ちでいっぱいでしたが、
しかし、あとの日程はどうにも変更がならなくて、
「じゃあまた今度」ということになったのでした。
買い付けも15年目に突入しましたが、
毛色の違うルートが増えてこれからがまた楽しみですし、
なんだかとても面白いところ(国)で買い付けが出来ているんじゃないかなって、
あらためてそんなふうに思えてきました。
↑マダムMのブースの一角
ミラーを嵌め込んだ大窓もテキサスからのサルベージ品
アメリカ買い付け紀行『19世紀の家具と内陸の町』
内陸の町。
一日目。
14軒のディーラーをまわりました。
大方のディーラーがひとところに密集してくれているお陰もあって
それだけの数をまわることが出来たのですが、
9月のカリフォルニアは下手をすると8月より暑いことが多く、
ちょうどこの時もそうで、
動き続けていたせいか
買い付け先では冷房がきいていても汗がやまず、
しかも「ぜんぶまわりたい」と思うばかりに勇み足にもなっていて、
なんだかどこのディーラーに行っても一人だけ浮いたような感じでした(笑)
あるアンティークモールでは
すごい早さでブースをくまなく見て、
気に入りがあると廊下まで持ち出して四方から眺めたり写真を撮ったりしている私を見て、
「彼女はアンティークがよほど好きに違いない」と、
私の耳にも届けたかったのか、大きな声で話す家族連れまでいました。。
↑前列の彼らです。
モールオーナーと一緒に最後に記念写真。
「あなたはインテリアデザイナーなの?」
アメリカでは女性ひとりでアンティークをいっぱい買っていると
みんなまずそうやって思うのかな?、
よくそう聞かれるのですが、
私が顔を向けると、この家族の奥さんが同じことを聞いてきました。
「日本でアンティークの店をやっている」といつものごとく答えると、
旦那さんが50年代の日本のおもちゃのコレクターなのだそうで、
出会いをいたく喜んでくれました。
「日本のきみの店に買い物に行くよ」と
冗談でそんなことも付け足してくれて。
でも嬉しかったな。
この町で集まったモノのいちぶ。
暑いこともあってなのか、
先の家族もですが、他のモールで居合わせたひとや通行人のひとも
ディーラーにまじって車への積み込みを手伝ってくれました。
こうやって買い付け画像を振り返っていると、
その時のことが思い出されてきます。
二日目は、朝から大移動。
一時間半離れた、別の内陸の町へ。
あるモールがヒットで、
画像の真ん中のリビングボードをはじめ
一軒にしてはなかなかの量を集めることが出来ました。
リビングボードは1800年代後期に作られたもので、
リアルアンティークです。
出会えて、そして自分が買い付けることが出来たことに興奮。。
すると隣のアルモワールまで欲しくなってきて。。。
私が何も言わないうちからモールのマダムがブースオーナーに掛け合って
日本で小売り出来る金額にまでしてくれたのですが、
この大きさ・・・・・・・
売れる売れないではなかったし、
店内のスペースだって作ることだって出来る、
でもこれを基本的には私と夫のふたりしかいないKioで・・
というか厳密に言えば、ふたりしかいない内のひとりは女性のショップで、
この分厚い鏡を扉に嵌め込んだ巨大な家具を、扱う・・
・・最終お客さまのところまできちんと届ける・・ことに対しての自信が
今は持てなかった。
“壁”を感じた瞬間でした。
でも乗り越えたい、今後の課題ですね。
このモールでも、
腕を怪我したマダムに代わって、ここのお客さんが積み込みを手伝ってくれました。
大感謝です。
珍しいところではこんなアンティークのファイヤーピースが見つかったりして、
この後も順調にモノが集まりました。
もう汗も埃も、おかまいなし!
どんと来い!です!
二日間の買い付けということもあり、
車の荷台は、はちきれんばかりになりました。
帰り道。
暑さは前日の夕方と比べるとだいぶ和らいでいました。
休憩で立ち寄った牧場に面していて景色のいいレストアリアでは
メープルがすっかり色づいていて
暑さに反して早い、カリフォルニアの秋を目で感じました。